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風の吹きだまり

ここは別館ブログとなります。 某同盟でのチャット感想、回してくださったバトン回答など、オリキャラ交流関係の想いを綴る場所です。

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大切なもの(駄文注意)

せっかく書いたのでいずれ読み直して修正してサイトにUPするかもしれんけど、取りあえずこっちにUP。
勢いだけで書いたので多分色々おかしい。
初期の、旅を始めるようになってしばらくした頃の一行。
トパはまだいません。

まあ暇潰しに読んでやるかって方はどうぞ。

▽つづきはこちら





  地を揺るがす爆音、肌を掠る銃弾、ありとあらゆる場所に隠された多様な罠。
思い起こすと、そういったものが記憶の一番初めにある。その世界では年齢も性別も関係ない。強く賢く用心深い者のみが生き残る、弱肉強食の世界だ。
その事を嫌だとも辛いとも思った事はないし、己の生き方に疑問を持った事すらない。物心がついた時は既に、俺は、命令のままに動き躊躇いなく殺す兵器だった。
 

「ロディの大切なものって、何?」
唐突な質問に、ロディフルは疑問の表情を浮かべて振り返った。
「…大切なもの…?」
「うん。大切なものっていうと何を思い浮かべる?空気とか水とか食べ物とかじゃなくて、自分が失いたくないと思うもの。守りたいって思うもの」
ナスクがニコニコと身を乗り出してくる。旅路を共にするようになって半年、ようやくこの人懐こい少女が自分に付きまとうのにも慣れてきたところだ。
「…ナイフ」
少し考えた後、服の下に隠してあるナイフに触れて答える。
「ナイフ?何か特別な思い入れのあるものなの?」
「別に。…銃がなくても、これがあればより安全に身を守れる。戦ったり、狩りをしたり、ちょっとした武器や罠を作るのにもある方が便利」
その言葉に、ナスクは焦れるような表情をする。
「んー、そういうのじゃなくて。うーん…」
「…必要なものなら守る。失うと命や生活に支障をきたすのは、大切なものじゃないのか?」
ロディフルが理解出来ないという顔をしているのを見て、言葉を変えてみる。
「違うの。あたしが言ってるのはそういう実用的なのじゃなくて、もっと精神的なものの事。大切な思い出があって失いたくないとか、生き甲斐にしている対象とか。例えば、このペンダントはあたしにとって、とても大切なもの。顔も名前も知らない両親との、唯一の繋がりだもの」
首から下げたペンダントを見せながら言葉を続ける。
「でも、今一番大切なのは、皆と笑っていられる時間かな。大好きな皆が生きてる、笑っている。それが一番嬉しい。ロディは?そういう対象って、スライルかな?」
「…兄貴?何で?」
「―――え、だって兄弟だし…あれ、別に仲が悪い訳じゃないと思ってたけど…」
困惑するように言うナスクの言葉に、ロディフルの方がますます困惑するばかりだった。
仲間は大切にするべきものだ。時には役割分担をして動く必要もあり、常に単独行動をするというのは制限が大きい。だからこそ仲間の誰かの身に危険が及んだ時は守りもするし、敵に囲まれた時は協力もする。
だが、兄弟だと何かあるのか。スライルとは兄弟以前に、ボスであるディファーの元で動く仲間だった。部落が軍の襲撃で混乱に陥った時、スライルはロディフルを旅に連れ出した。
“騒動が落ち着くまで各々身を潜めるように。時期が来たらこちらから連絡する”というその命令があるからこそ、自分はずっとスライルと行動を共にしてきたのだ。―――この幾数年、連絡は未だないが。
いや、そもそもそれ以前に。
「…お前の言ってる意味が分からない。大切にしたいってどういう事?」
ロディフルの言葉に、ナスクの表情が凍り付く。
「…大切にしたいというのは…好き、と似ているかな。ちょっと違うけど。愛おしいという事…好き、の延長上にあるのかも」
何故か、悲しそうな顔で笑った。
「あたしはロディが好きだし、大切だよ。スライルも、セイドも、マイアも。きっと皆、ロディの事大切だと思ってる」
何故そんな顔で笑うのか、ロディフルには分からない。それを知ってか、ナスクは諭すように続ける。
「…きっといるよ。ロディが大切にしたいと思う相手が。…きっと、分かるようになる」
どう答えればいいのか分からなかった。そしてまた、こうも思う。やっぱり、感情ってよく分からない。
 

“好き”という感情は知っている。スライルとセイドは酒が好きで、宿に泊まる時は決まって酒盛りをしている。マイアは料理や裁縫が好きで、いつもしようとする。下手なのに。
ナスクは歌が、空が好き。いつも何かを口ずさんでいるし、気付くと空を見上げている。
好きというのは、必要性はなくても何度でもそれをしたり、ずっと側に置いていたりする事だ。そう結論づけて、ロディフルは納得がいったように一人で頷く。だからナスクは、特に用事もないのに何度でも俺の側に来るのだ。俺の事が好きだから。兄貴やセイドやマイアの事も好き、だからいつも一緒にいて特に意味のない話をしている。
 

「おう、どうした」
普段は何か用事がない限り自分から誰かに近付く事のないロディフルが側に来たのを見て、スライルはナイフを磨く手を止めた。
「兄貴は俺の事が大切?」
「どうしたお前、今頃俺の素晴らしさに気付いて不安になったか?心配するな、いかに俺が素晴らしくても…」
そこまで言って、ロディフルの視線に気付く。今までこんな事を聞いてきた事がない弟。
「…大切だ。当たり前だろ」
「どうして?俺が戦力になるからか?」
「ああ、まあ…それに、やっぱ兄弟だしな」
首に手をやりながら戸惑うように答える。
また、兄弟だ。兄弟と赤の他人と何が違う?
「…どうして兄弟だと大切?」
「―――ん…」
カチャカチャとナイフをしまうと、ロディフルの方に向き直る。少し伏し目がちに、考えるようにしながら喋り出す。
「うん…何ていうのかな。俺はお前を生まれた時から見てる訳よ。お前、こんなにちっちゃくて、可愛くてなあ…」
昔を思い出す、遠い目。それはロディフルが見た事のない兄の顔だった。
「家族の話はした事なかったよな。お前と俺の間に二人の姉妹がいてな…お前にとっちゃ姉ちゃんだ。それと父さん母さんがいた。六人で旅行してる時に事故があって、俺とお前だけが助かってディファーの元で暮らしてきた。だから俺にとっちゃ唯一の家族だしな…兄だから何かあればお前を助けなきゃと思ってきたし、逆にお前がいる事で俺も救われたし、頑張れた」
それは答えになってない、と思う。兄だと弟を助けなきゃいけないのは何故か、そういう事を聞きたいのだ。だが、その時の自分を見る兄の顔のあまりにも嬉しそうな、それでいて悲しそうにも苦しそうにも見える表情に戸惑い、それを言う事は出来なかった。その表情は、大切なものを語る時のナスクのそれにも似ていた。つまり、兄は本当に自分の事を大切だと思っているのだろう。
「まあそれに、別に弟だからって義務的に大切だと思っている訳じゃねーぞ。あくまでもお前が大切なのであって、兄弟というのはただの付加価値に過ぎない」
「…そっか」
つまり、兄弟であるという事はそれだけ長い時間一緒にいるから、他者よりも大切になるのだろうと推測しながら頷く。大切にしたいというのは、やっぱりまだよく分からないけども。
「…って、まあ…今更俺がこんな事言っても白々しい上に説得力もねえな。うん、あんま気にすんな」
ポン、とロディフルの頭に手を置くと立ち上がってどこかへ去ってしまう。
その言葉が意味するところを量りかねて首を傾げるが、気にしない事にして気持ちを切り替える。本人が気にするなと言うのだから。
必要でもない事で兄とこれだけ沢山話をするのは初めてだ、とふと思う。自分は別に用事がない時は近付かなかったし、向こうからも話しかけてこなかったから。
だけど、悪くない、とも思う。よくは分からないが。今まで感じた事のない妙な気分だ。
 

その少年が色々な感情を理解するようになるのは、もう少し先の事。


22243e08.jpg
(本編の表情と台詞とはちょっと違うよ!)
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